case1課題:熱硬化性樹脂の折損対策
製品:消弧棒
材質:ユリア樹脂(UF)
《技術者コメント》
長さ90mm/直径φ15mm の単純な形状ですが、この製品が1~2年に一度、真ん中から真っ二つに折れてしまう不良が必ず起こりました。(年間生産量3~5万個)
最初は原因がわからずにずいぶん悩みましたが、成形方法をトランスファーからコンプレッションへ、さらに材料の投入方法、成形周辺機器の自動化を施すことで、不良率ゼロ・低コスト化の実現に成功しました。
熱硬化性樹脂の成形方法のアプローチは60数年に渡る当社のノウハウが最適な方法を提供します。
case2課題:難燃グレードのデラミネーション不良対策
製品:インバーター用ケース(本体・操作パネル等一式)
材質:ポリフェニレンエーテル(PPE)
ポリフェニレン(PPO)
《技術者コメント》
デラミネーションという不良をご存知でしょうか?
一見製品は綺麗に見えるのですが、実は中が空洞化してしまい物性特性が全く落ちてしまっている状態です。酷いものは水ぶくれのように表面が膨れ上がり、まるで形の悪い醤油せんべいのような状態になってしまいます。
さらにこの不良は成形直後に起こらず、数時間後に起こるから大変恐ろしい不良です。
私は韓国でTRYを行い、喜んでハンドキャリーで30セットのサンプルを日本へ持ち帰り、翌朝サンプルを納品しようとしたら全て不良! すぐに韓国へ飛んでやり直す・・・でも上手くいかない。とんだ目に会い苦い経験をしたものです。
結果的には成形条件・金型の変更で見事不良ゼロに落ち着くことができました。
UL規格のV-0のように難燃グレードの材料には少なからずこの不良を考慮しておかないと痛い目に会うので難しいところです。
case3課題:コイルインサートの変形対策
製品:ローター
材質:ポリフェニレンサルファイド(PPS) コイルインサート
《技術者コメント》
ステッピングモーターの心臓部。このコイルが曲者で射出圧力に負けて変形してしまい、ほとんど不良というところからスタートしました。
成形条件を可能な限り低圧射出で、金型温度を出来るだけ高く保ち変形を止めようとしましたが上手くいきません。徹夜まがいで当時の工場長が試行錯誤しているうちに、ある工程でとんでもない間違えを気づかずにそのまま成形。何と、それが良品に!!
良品が急にできるようになったのはいいのですが間違えに気づいていないので、なぜ良品が可能になったかさっぱりわからず2日悩みましたが…。ついに気が付いて間違えを再現!
結局それは間違えではなく新たな対処法となったのでした。
ちょっと笑い話ですが、ほんの少しの変化を注意深く分析して得られた貴重な経験でした。
case4課題:ファン形状の重量バランス調整
製品:FAN & ラジエターファン
材質:6,6ナイロン ガラス入り(PA6.6+33%GF)
ポリプロピレン ガラス入り(PP+30%GF)
《技術者コメント》
私が入社して最初に課題にさせられたのがこれでした。(真っ直ぐな羽のFAN)
FAN全体のアンバランスを最終的に金型で調整します。要はタイヤに鉛の重りをつけてバランスを取るのと同じで羽の厚みを変えて重量バランスを取ります。
でも30年ほど前はそれほど金型精度もよくなく、またバランス量を計算して金型を直すのですが、取りすぎたり、少なかったりで、何度も金型を削りなおしてバランスを取るのが常でした。それを根本的に解決するような金型構造に思い切って変更! これで私はバランス取りの名人になれました。
その後は3D形状のラジエターファンでもその経験を活かし、バランス取りを含めた量産の立ち上げも短納期での対応を可能としました。
現在はバランス検査機も所有し品質管理にもしっかり対応します。
case5課題:熱硬化性樹脂インサート成形品 極肉厚の反り対策
製品:高電圧用端子
材質:エポキシ樹脂(EP) インサート
《技術者コメント》
6600Vの送電線からの1次線や200Vへの変換後の2次線を支える極肉厚の熱硬化性樹脂のインサート成形です。
非常に簡単な形状ですがこれを0.1mm以下の平面度を保って真っ直ぐな製品を得ることは結構難しいものがあります。材料の収縮、金型温度の分布、材料の流動性、等々…不安定要因満載ですが、基本に立ち返り、当社得意のコンプレッション成形(圧縮成形)と金型構造でこれを解決!
解決までは、反りを矯正治具で逆方向に力を掛けてアニーリングしたりして不良を出しながらの対処療法のような生産をしていましたが、今は全てが良品です。